BRUXISM TREATMENT


歯ぎしり・食いしばり治療

睡眠中の歯ぎしりや、無意識の食いしばりは、
大切な歯に深刻なダメージを与えます。
エビデンスに基づいた適切な治療で、歯を守りましょう。

WHAT IS BRUXISM

ぎしり・いしばりとは

歯ぎしり・食いしばりは、医学的にはブラキシズム(Bruxism)と呼ばれ、 睡眠中や日中に無意識に歯を強く噛みしめたり、こすり合わせたりする習癖性の運動障害です。

疫学データ

  • 成人の約8〜16%が睡眠時ブラキシズムを有している
  • 覚醒時ブラキシズム(食いしばり)は成人の約20%に見られる
  • 自覚症状がない場合が多く、実際の有病率はさらに高いと推定される

Lavigne GJ et al., Sleep Med Rev 2008; Lobbezoo F et al., J Oral Rehabil 2013

ブラキシズムの3つのタイプ

グラインディング

上下の歯をギリギリと強くこすり合わせるタイプ

  • 音が出るため家族に指摘されることが多い
  • 歯のすり減りが著しい
  • 主に睡眠中に発生

クレンチング

音を立てずにグッと強く噛みしめるタイプ

  • 無音のため自覚しにくい
  • 日中、集中時やストレス時にも発生
  • 舌や頬に圧痕が見られる

タッピング

上下の歯をカチカチと素早く噛み合わせるタイプ

  • 比較的頻度は少ない
  • リズミカルな動作
  • 歯や顎への負担となる
SELF CHECK

こんな症状ありませんか?

以下の症状に当てはまる場合、歯ぎしり・食いしばりの可能性があります

朝の症状

  • 起床時に顎が疲れている・痛い
  • 肩こりや頭痛がひどい
  • こめかみや頬の筋肉が張っている

歯の変化

  • 歯が短くなった・すり減っている
  • 歯の根元が削れている(くさび状欠損)
  • 詰め物や被せ物がよく取れる

口腔内の変化

  • 舌の側面に歯型がついている
  • 頬の内側に白い線(噛み跡)がある
  • 家族に歯ぎしりを指摘された
RISKS OF NEGLECT

放置することによる悪影響

歯ぎしり・食いしばりは、体重の数倍もの力が歯や顎にかかります。
放置すると様々な問題を引き起こします。

1

損傷・破壊

ブラキシズムによる咬合力は、通常の咀嚼時の約2〜10倍にも達します。 この過度な力により、歯に深刻なダメージが蓄積されます。

主な損傷パターン

歯の摩耗(Tooth Wear)
  • エナメル質が削れ、象牙質が露出
  • 知覚過敏の原因となる
  • 歯が短くなり、審美性が損なわれる
歯の破折(Tooth Fracture)
  • 歯冠破折:歯の上部が割れる
  • 歯根破折:歯の根が割れる(抜歯の原因)
  • クラック(亀裂)の進行
くさび状欠損(Abfraction)
  • 歯の根元がV字に削れる
  • 咬合力の集中により発生
  • 知覚過敏や虫歯のリスク増加
修復物の破損
  • 詰め物・被せ物の頻繁な脱落
  • セラミック修復物の破折
  • 再治療のコスト増加

エビデンス

Lobbezoo F らの系統的レビュー(J Oral Rehabil 2013)によると、ブラキシズムは歯の摩耗、破折、および修復物の失敗と強く関連しています。 特に、睡眠時ブラキシズムを有する患者では、歯の摩耗のリスクが約3倍高いことが報告されています。

Lobbezoo F et al., J Oral Rehabil 2013; Manfredini D et al., Clin Oral Investig 2015

2

顎関節症のリスク増加

ブラキシズムは、顎関節症(TMD: Temporomandibular Disorders)の主要なリスク因子の一つです。

顎関節への影響

関節への過負荷
  • 関節円板の変位や損傷
  • 関節痛・開口障害の発生
  • クリック音やクレピタス(ゴリゴリ音)
咀嚼筋の障害
  • 咬筋・側頭筋の肥大と圧痛
  • 筋筋膜性疼痛(Myofascial Pain)
  • 開口制限・咀嚼困難

エビデンス

Shetty S らのメタアナリシス(J Indian Prosthodont Soc 2010)では、ブラキシズムを有する患者は、 そうでない患者と比較して顎関節症の有病率が約4倍高いことが示されています。 特に睡眠時ブラキシズムは、筋筋膜性疼痛と強く関連しています。

Shetty S et al., J Indian Prosthodont Soc 2010; Raphael KG et al., J Orofac Pain 2012

3

全身への影響

頭痛・肩こり

  • 緊張型頭痛の原因となる
  • 側頭筋の持続的緊張による頭部痛
  • 頸部・肩部の筋緊張と関連痛

睡眠障害

  • 睡眠の質の低下
  • 中途覚醒の増加
  • 日中の疲労感・集中力低下

歯周病の悪化

  • 過度な咬合力により歯周組織が損傷
  • 歯の動揺の進行
  • 歯周病による歯の喪失リスク増加

その他の影響

  • 耳鳴り・耳閉感
  • めまい・ふらつき
  • 生活の質(QOL)の低下

エビデンス

Ciancaglini R らの研究(Cranio 1999)では、ブラキシズム患者の約60%が頭痛を訴え、 その多くが緊張型頭痛であることが報告されています。また、Lavigne GJ らの研究(Sleep Med Rev 2008)では、 睡眠時ブラキシズムが睡眠の質を低下させ、日中の眠気や疲労感と関連することが示されています。

Ciancaglini R et al., Cranio 1999; Lavigne GJ et al., Sleep Med Rev 2008

TREATMENT OPTIONS

治療方法

エビデンスに基づいた様々な治療法で、
歯ぎしり・食いしばりによるダメージを最小限に抑えます

推奨度:高
保険適用

ナイトガード(スプリント療法)

歯を守る最も標準的な治療法

オーダーメイドのマウスピース(ナイトガード)を睡眠時に装着することで、 歯と顎関節を保護します。最も一般的で、エビデンスの確立された治療法です。

メリット

  • 歯のすり減り・破折を効果的に防止
  • 顎関節への負担を軽減
  • 筋肉の緊張緩和により頭痛・肩こりが改善
  • 保険適用で経済的(3割負担で約3,000〜5,000円)
  • 非侵襲的で副作用が少ない

デメリット・注意点

  • 装着に慣れるまで違和感がある(通常1〜2週間)
  • 歯ぎしりそのものを止めるものではない(対症療法)
  • 毎日の装着と適切な管理が必要
  • 定期的なチェックと調整が必要

エビデンス

Macedo CR らのコクランレビュー(Cochrane Database Syst Rev 2007)では、 スプリント療法は歯の摩耗を予防し、顎関節症の症状を軽減する効果があることが示されています。 また、Landry ML らの研究(Cranio 2006)では、ナイトガード使用により筋筋膜性疼痛が平均50%減少したことが報告されています。

Macedo CR et al., Cochrane Database Syst Rev 2007; Landry ML et al., Cranio 2006

治療の流れ

1
問診・診査

症状の確認、歯のすり減り具合、顎関節の状態をチェック

2
型取り

精密な歯型を採取し、オーダーメイドのナイトガードを作製

3
装着・調整(約1週間後)

完成したナイトガードの装着、噛み合わせの微調整、使用方法の説明

4
定期チェック

3〜6ヶ月ごとにナイトガードの状態確認と調整

推奨度:中
自費診療

ボトックス治療

咬筋の過緊張を緩和する治療法

ボツリヌストキシン(ボトックス)を咬筋に注射することで、 筋肉の過剰な収縮を抑制し、食いしばりの力を弱める治療法です。 美容目的のボトックスと同じ薬剤を使用しますが、目的は筋肉の緊張緩和です。

メリット

  • 咬筋の過緊張を直接的に緩和
  • 食いしばりの力が弱まる
  • 頭痛・肩こりの改善効果が高い
  • エラの張りが改善され、小顔効果も
  • 施術時間が短い(約10〜15分)

デメリット・注意点

  • 効果は一時的(約3〜6ヶ月)で、定期的な再注射が必要
  • 自費診療のため費用が高い(両側で3〜5万円程度)
  • 効果発現まで数日〜2週間かかる
  • まれに咬む力が弱くなりすぎることがある
  • 妊娠中・授乳中は使用不可

エビデンス

Lee SJ らの無作為化比較試験(J Dent Res 2010)では、ボトックス注射により睡眠時ブラキシズムのエピソード頻度が約60%減少したことが報告されています。 また、Al-Wayli H らの系統的レビュー(J Oral Rehabil 2017)では、ボトックスは筋筋膜性疼痛の軽減に有効であるとされています。 ただし、長期的な安全性と有効性についてはさらなる研究が必要とされています。

Lee SJ et al., J Dent Res 2010; Al-Wayli H et al., J Oral Rehabil 2017

こんな方におすすめ

  • ナイトガードだけでは症状が改善しない方
  • 日中の食いしばりが強い方
  • 頭痛・肩こりが特にひどい方
  • 咬筋の肥大(エラの張り)が気になる方
推奨度:中〜高
保険適用外(一部条件あり)

矯正治療による咬合改善

顎位・咬合を整えることで根本から改善

歯並びや噛み合わせの異常がブラキシズムの原因となっている場合、矯正治療により顎位を適正化し、咬合バランスを整えることで、根本的な改善が期待できます

重要:すべてのブラキシズムが咬合異常によるものではありません。 精密な診査診断により、矯正治療が適応かどうかを慎重に判断する必要があります。

メリット

  • 咬合の根本的な改善
  • 顎位の適正化により顎関節への負担が軽減
  • 歯並びの改善により審美性も向上
  • 咀嚼機能の向上
  • 長期的な効果が期待できる

デメリット・注意点

  • 治療期間が長い(1〜3年程度)
  • 費用が高額(70〜150万円程度)
  • 矯正中の装置の違和感や痛み
  • すべてのブラキシズムに有効とは限らない
  • 矯正後の保定(リテーナー)が必要

エビデンス

咬合異常とブラキシズムの関連については議論がありますが、Manfredini D らの研究(J Oral Rehabil 2012)では、 特定の咬合干渉(early contact)を有する患者では、矯正治療や咬合調整によりブラキシズムが軽減する可能性が示唆されています。 ただし、咬合調整だけでブラキシズムを完全に治療できるとするエビデンスは限定的であり、 多因子性の問題として包括的にアプローチすることが重要です。

Manfredini D et al., J Oral Rehabil 2012; Lobbezoo F et al., J Oral Rehabil 2018

矯正治療の適応となる咬合異常

  • 開咬(前歯が咬み合わない)
  • 過蓋咬合(深い噛み合わせ)
  • 交叉咬合(横のずれ)
  • 顎のずれ(顎偏位)
  • 早期接触(特定の歯が先に当たる)

当院の矯正治療

当院では、ブラキシズムの原因が咬合異常にあると診断された場合、 矯正専門医と連携して適切な治療計画を立案します。

  • 精密な咬合診査(咬合器分析、顎運動測定など)
  • 3Dシミュレーションによる治療計画の可視化
  • マウスピース矯正・ワイヤー矯正など複数の選択肢

その他の治療法・セルフケア

認知行動療法(CBT)

ストレスや不安がブラキシズムの原因となっている場合、認知行動療法が有効です。

  • リラクゼーション技法の習得
  • ストレスマネジメント
  • バイオフィードバック療法

生活習慣の改善

日常生活での意識改善も重要です。

  • 日中の食いしばりに気づいたらリラックス
  • カフェイン・アルコールを控える
  • 睡眠の質を改善する

理学療法・マッサージ

筋肉の緊張を和らげることで症状を軽減します。

  • 咬筋・側頭筋のマッサージ
  • 温熱療法(ホットパック)
  • 顎のストレッチ体操

薬物療法

症状が重度の場合、一時的に薬物療法を併用することがあります。

  • 筋弛緩剤(短期間のみ)
  • 抗不安薬(医師の処方が必要)
  • 痛み止め(対症療法)
FAQ

よくあるご質問

Q歯ぎしりは完全に治りますか?

歯ぎしりの原因はストレス、遺伝、咬合異常など複合的であり、完全に「治す(なくす)」ことは難しいのが現状です。治療の目的は、ナイトガードやボトックスなどで歯や顎への負担を軽減し、症状をコントロールすること(対症療法)が中心となります。ただし、咬合異常が原因の場合は、矯正治療により根本的な改善が期待できる場合もあります。

治療アプローチ

  • 対症療法:ナイトガード、ボトックス
  • 根本治療:咬合異常の場合は矯正治療

Qナイトガードは保険適用ですか?

はい、歯科医院で作製するナイトガード(スプリント)は保険適用です。3割負担の方で約3,000円〜5,000円程度で作製できます(初診料・検査料等は別途)。ただし、市販のマウスピースは保険適用外であり、フィット感も劣るため、歯科医院でオーダーメイドのものを作製することをお勧めします。

歯科医院製

  • • 保険適用
  • • 3,000〜5,000円
  • • オーダーメイド
  • • フィット感良好

市販品

  • • 保険適用外
  • • 価格は安いが...
  • • フィット感不良
  • • 効果不十分

Q市販のマウスピースでも効果はありますか?

市販品は誰にでも合うように作られているため、フィット感が悪く、逆に顎を痛めたり噛み合わせが悪くなるリスクがあります。また、適切な厚みや硬さでないと、歯を守る効果が不十分です。歯科医院でご自身の歯型に合わせて作製したものを使用することを強くお勧めします。

市販品のリスク

  • フィット感が悪い
  • 顎を痛めるリスク
  • 噛み合わせが悪化する可能性
  • 保護効果が不十分

Qボトックス治療の効果はどのくらい持続しますか?

ボトックスの効果は個人差がありますが、通常3〜6ヶ月程度持続します。効果が切れてきたら、再度注射を行う必要があります。定期的に継続することで、咬筋が徐々に小さくなり、食いしばりの力も弱まっていく傾向があります。

ボトックスの効果

  • 持続期間:3〜6ヶ月
  • 定期的な継続が必要
  • 継続により咬筋が小さくなる
  • 食いしばりの力が弱まる傾向

Q矯正治療をすれば歯ぎしりは治りますか?

矯正治療が有効なのは、咬合異常(噛み合わせのずれ)がブラキシズムの主な原因となっている場合です。すべての歯ぎしりが咬合異常によるものではないため、精密な診査診断が必要です。ストレスや遺伝的要因が強い場合は、矯正だけでは改善しないこともあります。

効果あり

咬合異常が主原因の場合

効果限定的

ストレス・遺伝要因が主原因の場合

Q日中も食いしばっていることに気づきました。どうすればいいですか?

日中の食いしばり(覚醒時ブラキシズム)には、意識的なリラクゼーションが効果的です。気づいたらすぐに顎の力を抜き、上下の歯を離すようにしましょう。「唇は閉じて、歯は離す」を意識してください。また、ストレス管理や認知行動療法も有効です。重度の場合はボトックス治療も検討されます。

セルフケア

  • 気づいたら顎の力を抜く
  • 「唇は閉じて、歯は離す」
  • ストレス管理
  • 認知行動療法

Q子供も歯ぎしりをしますが、治療は必要ですか?

子供の歯ぎしりは成長過程で一時的に見られることが多く、多くの場合は自然に治まります。ただし、乳歯や永久歯が大きくすり減っている場合、顎の痛みを訴える場合は、小児歯科での相談をお勧めします。必要に応じて、子供用のナイトガードを作製することもあります。

受診が必要な場合

  • 歯が大きくすり減っている
  • 顎の痛みを訴える
  • 多くは自然に治まる

まずは一度、お気軽にご相談ください

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