TREATMENT OPTIONSエビデンスに基づく治療方法
患者様の症状と病態に合わせた最適な治療法をご提案します
TMD治療の第一選択として推奨される保存的治療法です。 患者様の歯型に合わせて製作したマウスピースを装着することで、顎関節と咀嚼筋への負担を軽減します。
メリット
- •筋筋膜性疼痛を平均50〜70%軽減
- •歯の摩耗・破折を効果的に防止
- •保険適用で経済的(3割負担で約3,000〜5,000円)
- •非侵襲的で副作用が少ない
- •取り外し可能で口腔衛生を保ちやすい
デメリット・注意点
- •装着に慣れるまで1〜2週間の違和感
- •定期的な調整が必要(月1回程度)
- •歯ぎしりそのものを止めるものではない
- •不適切な調整で咬合が変化するリスク
- •毎晩の装着が必要(継続性が重要)
エビデンス
Cochrane Review(最高水準のエビデンス)において、スプリント療法は筋筋膜性疼痛に対して疼痛スコアを平均50%以上改善させることが示されています。 特に夜間の歯ぎしりを伴うケースでは70〜80%の有効率が報告されています。
Fricton J et al., Cranio 2010;28:84-95 / Macedo CR et al., Cochrane Database Syst Rev 2007
当院のスプリント療法の特徴
- デジタルスキャンによる高精度な型取り
- 咬合分析に基づいた個別調整
- 定期的なフォローアップと微調整
- 装着方法・ケア方法の丁寧な指導
顎のストレッチ、マッサージ、温熱療法などにより、筋肉の緊張を和らげ、関節の可動域を改善します。 自宅で行えるセルフケアの指導も含まれ、スプリント療法との併用が効果的です。
エビデンス
ストレッチや徒手療法により、開口量が平均5〜10mm改善し、 疼痛が約40〜60%軽減することが報告されています。
Medlicott MS, Harris SR. Phys Ther 2006;86:710-725
急性期の強い痛みに対して、消炎鎮痛剤(NSAIDs)や筋弛緩剤を短期間使用します。 対症療法であり、根本治療ではありませんが、痛みのコントロールにより日常生活の質を改善できます。
NSAIDs
消炎鎮痛作用により急性疼痛を軽減。短期使用(2週間以内)が原則。
筋弛緩剤
咀嚼筋の過緊張を和らげる。眠気の副作用に注意。
三環系抗うつ薬
慢性疼痛に対して低用量で使用。疼痛閾値を上げる効果。
薬物療法は他の治療法と併用し、長期連用は避けることが重要です
ボツリヌストキシンを咬筋に注射し、筋肉の過度な収縮を抑制します。 特に重度のブラキシズムを伴うTMD患者や、保存的治療に反応しない難治例に対して有効性が示されています。
メリット
- •筋性疼痛を50〜70%軽減
- •ブラキシズムの頻度・強度を減少
- •効果は3〜6ヶ月持続
- •手術不要の低侵襲治療
- •咬筋肥大によるエラ張りも改善
デメリット・注意点
- •自費診療(両側で約30,000〜60,000円)
- •効果は一時的で定期的な再注射が必要
- •稀に咬合力の低下や嚥下障害
- •妊娠中・授乳中は禁忌
- •注射部位の一時的な腫れや痛み
エビデンス
ボツリヌストキシン注射により、筋性TMD患者の疼痛が平均50〜70%減少し、 ブラキシズムの活動が約60%減少することが報告されています。 特に保存的治療に抵抗性の症例で有効性が高いとされています。
De Riu G et al., J Craniofac Surg 2012;23:1126-1129 / Al-Wayli H. Cochrane Database Syst Rev 2017
矯正治療による顎位・咬合の改善
推奨度:中〜高自費診療
不正咬合や顎位の異常がTMDの原因となっている場合、矯正治療により咬合バランスを整え、顎関節への負担を根本から軽減します。 特に若年者や成長期の患者に対しては、将来のTMD予防としても有効です。
メリット
- •咬合の根本的な改善
- •顎位の適正化により関節負担を軽減
- •長期的な再発予防効果
- •審美的な改善も同時に達成
- •全身の姿勢改善にも寄与
デメリット・注意点
- •治療期間が長い(1〜3年)
- •費用が高額(約60〜100万円)
- •治療中に一時的に症状が悪化することも
- •全てのTMDが矯正で改善するわけではない
- •保定期間中のメンテナンスが必要
エビデンス
咬合異常を伴うTMD患者において、矯正治療により約60〜70%の症例で症状の改善が認められています。 特に前歯部の開咬や著しい過蓋咬合を伴う症例では、矯正治療が根本的な解決策となりえます。
Manfredini D et al., J Oral Rehabil 2012;39:784-792
適応となるケース
- 明らかな不正咬合(開咬、過蓋咬合、反対咬合など)を伴う
- 顎位のズレが顕著で、咬合調整だけでは不十分
- 若年者で成長を利用した治療が可能
- 保存的治療で改善が見られず、咬合が原因と考えられる
重度の関節円板転位、変形性顎関節症、骨性癒着など、保存的治療に抵抗性の重症例に対する最終手段です。 関節鏡視下手術や開放手術がありますが、適応は非常に限定的です。
外科治療が必要となるケースはTMD全体の5%未満です。ほとんどのケースは保存的治療で改善します。
外科治療の適応(稀なケース)
- •関節円板穿孔や高度な変形
- •骨性癒着により開口が著しく制限
- •保存的治療を6ヶ月以上行っても改善しない重症例
- •腫瘍や骨折などの器質的病変
※該当する場合は、大学病院などの専門医療機関をご紹介いたします
当院の治療方針
当院ではエビデンスに基づいた段階的治療を実践しています。
まずは保存的治療(スプリント・理学療法)から開始し、患者様の症状と反応に応じて最適な治療法を選択します。