不正咬合の種類

上顎前突(じょうがくぜんとつ)

通称:出っ歯(でっぱ)

上顎前突は、上の前歯が前に突き出している状態です。「出っ歯」とも呼ばれ、見た目だけでなく、口が閉じにくい、発音がしにくいなどの機能的な問題も引き起こします。早期治療により、顎の成長をコントロールしながら効果的に改善できます。

上顎前突の特徴

1見た目の特徴

  • 上の前歯が前に突き出ている:正常な位置よりも前方に出ている状態です
  • 口が閉じにくい:上唇と下唇の間に隙間ができやすくなります
  • 横顔が特徴的:鼻と顎を結ぶEラインより唇が前に出ています
  • オトガイ部の緊張:口を閉じようとすると顎に梅干しのようなシワができます

2機能面での問題

  • 咀嚼機能の低下:前歯で食べ物を噛み切りにくくなります
  • 発音障害:サ行やタ行の発音が不明瞭になることがあります
  • 口呼吸:口が開きやすいため、口呼吸になりがちです
  • 口腔乾燥:口が開いていることで口の中が乾燥しやすくなります
  • 前歯の損傷リスク:転倒時などに前歯をぶつけやすく、破折のリスクが高まります

!放置した場合のリスク

  • 虫歯や歯周病のリスク増加:口呼吸による口腔乾燥で細菌が繁殖しやすくなります
  • 顎関節症のリスク:噛み合わせのバランスが悪いことで顎に負担がかかります
  • コンプレックスの形成:見た目を気にして笑顔に自信が持てなくなることがあります
  • 成長とともに悪化:成長期に放置すると、さらに前突が進行する可能性があります

早期発見・早期治療が重要:成長期のお子様の場合、顎の成長をコントロールすることで、抜歯を避けられる可能性が高まります。6〜8歳頃での治療開始が理想的です。

上顎前突の原因

1遺伝的要因

  • 骨格的な遺伝:上顎が大きい、または下顎が小さい骨格が遺伝することがあります
  • 歯の大きさの遺伝:顎の大きさに対して歯が大きい場合、前に出やすくなります
  • 顎の成長パターン:上顎が前方に成長しやすい、または下顎の成長が不足する傾向が遺伝します

遺伝の影響:親が上顎前突の場合、お子様も同様の傾向を持つ可能性が高くなります。ただし、早期治療により適切にコントロールすることが可能です。

2環境的要因(後天的な習癖)

  • 指しゃぶり:3歳以降も続く指しゃぶりは、前歯を前方に押し出す大きな原因となります
  • 舌癖(舌突出癖):飲み込むときに舌が前歯を押す癖があると、徐々に前歯が前に出ます
  • 口呼吸:鼻づまりなどで口呼吸が習慣化すると、顎の正常な成長が妨げられます
  • 下唇を噛む癖:下唇を噛むことで上の前歯を前に押し出してしまいます
  • おしゃぶりの長期使用:3歳以降もおしゃぶりを使い続けると、歯並びに影響します
  • 軟らかい食べ物中心の食生活:よく噛まない食生活は顎の成長不足につながります

習癖の改善が重要:これらの習癖は保護者の方が気づいて早めに対処することで改善できます。矯正治療と並行して習癖の改善を行うことで、より効果的な治療が可能です。

治療方法

11期治療(6〜12歳頃)

成長期を利用した顎骨のコントロールが中心です。この時期の治療が最も効果的で、将来的な抜歯のリスクを大幅に減らせます。

  • 下顎の成長促進:機能的矯正装置で下顎を前方に誘導し、バランスを整えます
  • 歯列の拡大:拡大床装置で顎を広げ、永久歯のスペースを確保します
  • 習癖の改善:タンガードなどで舌癖や指しゃぶりを改善します

1期治療の目標:永久歯が正しく生えるための土台作りと、上下の顎のバランスを整えることです。この段階でしっかり治療することで、2期治療が不要になったり、簡単になったりします。

22期治療(12歳以降〜)

永久歯が生え揃った後に、歯の位置を細かく調整する段階です。

  • マルチブラケット装置:歯の表側または裏側にブラケットを装着し、ワイヤーで歯を動かします
  • マウスピース矯正:透明なマウスピースを使用した目立たない治療法も選択できます
  • 抜歯の可能性:1期治療で十分なスペースが確保できなかった場合、小臼歯を抜歯することがあります
  • 保定装置:治療後は後戻りを防ぐため、リテーナーを使用します

3主な使用装置

機能的マウスピース装置

マウスピース型の機能的矯正装置。下顎の成長を促進し、上下の顎のバランスを整えます。

1期治療

バイオネーター

下顎を前方に誘導する機能的矯正装置。取り外し可能です。

1期治療

拡大床装置

顎を横に広げてスペースを作る装置。ネジで少しずつ拡大します。

1期治療

ブラケット装置

歯の表面に装着し、ワイヤーで歯を動かします。最も一般的な装置です。

2期治療

マウスピース装置

透明なマウスピースで歯を動かす装置。目立たず、取り外しが可能です。

2期治療

4治療期間と費用の目安

1期治療(6〜12歳頃)

治療期間

1〜3年程度
(永久歯が生え揃うまで経過観察を含む)

費用

30〜50万円程度
(調整料:1回3,000〜5,000円程度)

2期治療(12歳以降〜)

治療期間

1.5〜2.5年程度
(保定期間:2年以上)

費用

40〜80万円程度
(1期治療から継続の場合は減額あり)

※費用は症状や使用する装置によって異なります。医療費控除の対象となる場合があります。詳しくは初回カウンセリングでご説明いたします。

最適な治療開始時期

🌟理想的な開始時期:6〜8歳

上顎前突の治療は、前歯が生え変わる6〜8歳頃が最も効果的です。この時期は成長を利用して顎のバランスを整えられるため、将来的に抜歯を避けられる可能性が高まります。

  • 上顎の過剰な成長を抑制できる時期
  • 下顎の成長を促進できる時期
  • 習癖の改善がしやすい時期
  • 永久歯のスペース確保がしやすい時期

3〜5歳での相談も推奨

明らかな出っ歯や指しゃぶりなどの習癖がある場合は、3〜5歳でも一度ご相談ください。早期に習癖を改善することで、不正咬合の進行を防ぐことができます。

12歳以降でも治療可能

成長期を過ぎてしまった場合でも、マルチブラケット装置やマウスピース矯正で治療可能です。ただし、骨格的な問題が大きい場合は、抜歯が必要になることがあります。

よくある質問

Q1

上顎前突は自然に治りますか?

A. 残念ながら、自然に治ることはほとんどありません。

  • 骨格的な問題や歯の位置異常は、成長とともにむしろ悪化する傾向があります
  • 指しゃぶりなどの習癖を改善すれば、軽度の場合は進行を止められることもあります
  • しかし、すでに出ている前歯を自然に戻すことはできません

早期に矯正治療を開始することで、顎の成長をコントロールしながら効果的に改善できます。6〜8歳頃の治療開始が最も効果的です。

Q2

必ず抜歯が必要ですか?

A. 早期治療を行えば、抜歯を避けられる可能性が高まります。

  • 6〜8歳で開始:顎を広げてスペースを作り、抜歯を避けられることが多い
  • 12歳以降:スペース不足が大きい場合、小臼歯の抜歯が必要なことがある
  • 成人:骨格的な問題が大きい場合、抜歯や外科矯正が必要なこともある

抜歯の有無は、顎の大きさ、歯の大きさ、前突の程度によって判断します。当院では可能な限り非抜歯での治療を目指しています。

Q3

ヘッドギアは学校でもつける必要がありますか?

A. いいえ、主に自宅での使用で効果が得られます。

  • 推奨使用時間:1日10〜14時間程度(主に就寝時と自宅にいる時間)
  • 学校では不要:外出時や学校では装着する必要はありません
  • 効果:指示された時間を守って使用すれば、十分な効果が得られます

装着時間が短いと効果が得られないため、保護者の方のサポートが重要です。お子様が嫌がる場合は、励ましと見守りをお願いします。

Q4

痛みはありますか?

A. 装置を装着した直後や調整後に、軽い違和感や痛みを感じることがあります。

  • 1期治療:痛みは少なく、主に違和感や圧迫感程度です
  • 2期治療:ブラケット調整後2〜3日は歯が浮くような痛みがあることも
  • 対処法:数日で慣れます。痛みが強い場合は鎮痛剤も使用できます

ほとんどの場合、痛みは3〜5日で治まります。お子様が痛がる場合は、軟らかい食事にするなどの配慮で対応できます。

Q5

指しゃぶりをやめさせれば治りますか?

A. 習癖の改善は重要ですが、すでに出ている歯は自然には戻りません。

  • 3歳未満:指しゃぶりをやめれば、自然に改善することもあります
  • 3歳以降:習癖をやめても、すでに出た歯は戻らないため矯正治療が必要です
  • 予防効果:早めにやめることで、悪化を防ぐことはできます

矯正治療と並行して習癖を改善することで、治療効果が高まり、後戻りも防げます。タンガードなどの装置で習癖改善をサポートします。

Q6

1期治療だけで終わることもありますか?

A. はい、症状が軽度〜中等度の場合、1期治療のみで終了できることもあります。

  • 1期のみで終了:軽度の上顎前突で、顎のバランスが整えば終了
  • 2期が必要:歯の細かい位置や角度を調整したい場合
  • 継続観察:永久歯が生え揃うまで定期的にチェックします

早期に治療を始めることで、1期治療のみで終了できる可能性が高まります。また、2期治療が必要な場合も、期間が短く済むことが多いです。

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上顎前突(出っ歯)は早期治療が効果的です。
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