不正咬合の種類

下顎前突(かがくぜんとつ)

通称:受け口(うけくち)、反対咬合

下顎前突は、下の前歯が上の前歯より前に出ている状態です。「受け口」「しゃくれ」とも呼ばれます。3歳児検診で最も多く指摘される不正咬合で、早期治療により顎の成長をコントロールしながら効果的に改善できます。

下顎前突の特徴

1見た目の特徴

  • 下の前歯が前に出ている:上の前歯より下の前歯が前方にあります
  • しゃくれた顎:下顎が突き出して見え、横顔の輪郭が特徴的です
  • 三日月型の顔貌:顔を横から見ると、下顎が前に出ている形になります
  • 受け口の口元:口を閉じても下唇が上唇より前に出ています

2機能面での問題

  • 咀嚼機能の低下:前歯で食べ物を噛み切れず、奥歯に負担がかかります
  • 発音障害:サ行やタ行の発音が不明瞭になります(特に「さしすせそ」)
  • 顎関節への負担:噛み合わせのバランスが悪く、顎に負担がかかります
  • 奥歯の早期摩耗:前歯が使えないため、奥歯が早く すり減ります

!放置した場合のリスク

  • 成長とともに悪化:下顎は成長期に大きく発育するため、放置すると骨格的な問題が進行します
  • 外科矯正が必要になる:成人後は顎の骨を切る手術が必要になることがあります
  • 顎関節症のリスク:噛み合わせのずれが顎関節に負担をかけ、痛みや開口障害の原因に
  • コンプレックスの形成:顔貌を気にして笑顔に自信が持てなくなることがあります

下顎前突は最も早期治療が重要:下顎前突は不正咬合の中でも特に早期治療が重要です。3〜5歳で治療を開始することで、顎の成長を適切にコントロールし、将来的な外科手術を避けられる可能性が高まります。

下顎前突の原因

1遺伝的要因(骨格性)

下顎前突は遺伝の影響が強い不正咬合です。特に骨格性の受け口は家族性が認められます。

  • 下顎骨の過成長:下顎が大きく成長しやすい遺伝的傾向があります
  • 上顎骨の劣成長:上顎が小さい、または成長が不足する傾向が遺伝します
  • 顎の成長パターン:下顎が前方・上方に成長するパターンが遺伝します
  • 家族歴:親や祖父母に受け口の方がいる場合、お子様も同様の傾向を持ちやすい

遺伝でも早期治療が有効:遺伝的要因が強い場合でも、3〜5歳からの早期治療により顎の成長をコントロールし、骨格的な問題を軽減できます。家族に受け口の方がいる場合は、早めにご相談ください。

2環境的要因(機能性・歯性)

遺伝以外にも、習癖や環境によって受け口になることがあります(機能性反対咬合)。

  • 舌癖(低位舌):舌が常に下の位置にあると、下顎を前に押し出します
  • 口呼吸:鼻づまりなどで口呼吸になると、舌の位置が下がり受け口を助長します
  • 下顎を前に出す癖:無意識に下顎を前に出す習慣があると、骨格に影響します
  • 上唇を吸う癖:上唇を吸い込む癖は、上の前歯を内側に傾け、受け口を悪化させます
  • 扁桃腺・アデノイドの肥大:気道が狭くなり、下顎を前に出す姿勢になりやすい

機能性反対咬合は改善しやすい:習癖や環境が原因の機能性反対咬合は、早期に治療を開始すれば比較的短期間で改善できます。3歳児検診で指摘された場合は、すぐにご相談ください。

治療方法

1超早期治療(3〜5歳)

⭐ 下顎前突は最も早期治療が効果的な不正咬合です!

3歳児検診で受け口を指摘されたら、すぐに治療を開始することをお勧めします。この時期の治療が最も効果的で、将来的な外科手術のリスクを大幅に減らせます。

  • ムーシールド:就寝時に装着するマウスピース型の装置。舌と口唇の筋機能を改善します
  • プレオルソ:やわらかいマウスピース型装置。日中1時間+就寝時の使用で効果が得られます
  • 舌訓練(MFT):舌を正しい位置に保つトレーニングで、口腔機能を改善します
  • 鼻呼吸トレーニング:口呼吸を改善し、正しい顎の成長を促します

超早期治療の成功率:3〜5歳で治療を開始した機能性反対咬合の70〜80%は、この段階で改善します。骨格性の場合も、顎の成長をコントロールすることで症状を軽減できます。

21期治療(6〜12歳頃)

混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)の治療。顎の成長をコントロールします。

  • 上顎前方牽引装置(フェイスマスク):上顎を前方に引っ張り、下顎とのバランスを整えます
  • 急速拡大装置:上顎を横に広げてスペースを作り、上顎の成長を促します
  • リンガルアーチ:下の前歯を後方に移動させる固定式の装置です
  • 機能的矯正装置:顎の位置関係を改善する取り外し式の装置です

成長期の治療が重要:下顎の成長は思春期にピークを迎えるため、それまでに上顎とのバランスを整えておくことが大切です。

32期治療(12歳以降〜)

永久歯が生え揃った後に、歯の位置を細かく調整する段階です。

  • マルチブラケット装置:ワイヤーとブラケットで歯を細かく調整します
  • マウスピース矯正:軽度〜中等度の場合は透明なマウスピースでも治療可能
  • 抜歯の可能性:スペース不足の場合、下の小臼歯を抜歯することがあります
  • 保定装置:治療後は後戻りを防ぐため、リテーナーを長期使用します

骨格性の場合:重度の骨格性下顎前突で、早期治療を行わなかった場合、成人後に外科的矯正治療(顎の骨を切る手術+矯正)が必要になることがあります。

4治療期間と費用の目安

超早期治療(3〜5歳)

治療期間

6ヶ月〜1年程度
(ムーシールド等の使用期間)

費用

10〜20万円程度
(調整料:1回3,000〜5,000円程度)

1期治療(6〜12歳頃)

治療期間

1〜3年程度
(成長観察を含む)

費用

35〜60万円程度
(調整料:1回3,000〜5,000円程度)

2期治療(12歳以降〜)

治療期間

1.5〜3年程度
(保定期間:2〜3年以上)

費用

40〜80万円程度
(1期治療から継続の場合は減額あり)

※費用は症状や使用する装置によって異なります。医療費控除の対象となります。超早期治療で改善すれば、総費用を大幅に抑えられます。

最適な治療開始時期

最も理想的:3〜5歳(超早期治療)

下顎前突は全ての不正咬合の中で最も早期治療が効果的です。3歳児検診で受け口を指摘されたら、すぐに治療を開始することをお勧めします。

  • 機能性反対咬合なら70〜80%がこの段階で改善
  • 骨格性でも早期から成長をコントロールできる
  • 治療期間が短く、費用も最小限で済む
  • 将来的な外科手術のリスクを大幅に減らせる

まだ間に合う:6〜10歳(1期治療)

混合歯列期も成長をコントロールできる重要な時期です。フェイスマスクなどで上顎を前方に牽引し、バランスを整えます。

12歳以降の治療

成長期を過ぎてしまった場合、歯の移動のみでの治療となります。骨格的な問題が大きい場合は、成人後に外科矯正(顎の骨を切る手術)が必要になることがあります。

よくある質問

Q1

受け口は自然に治りますか?

A. ごく軽度の場合を除き、自然に治ることはほとんどありません。

  • 乳歯列期の軽度な反対咬合:ごくまれに自然治癒することもありますが、3%程度と非常に少ない
  • ほとんどの場合:放置すると成長とともに悪化します
  • 早期治療が重要:3歳児検診で指摘されたら、すぐに相談することをお勧めします

「様子を見ましょう」と言われて放置するのは危険です。下顎は成長期に大きく発育するため、早期に治療を始めることが将来的な手術を避ける鍵となります。

Q2

ムーシールドは本当に効果がありますか?

A. はい、3〜5歳の機能性反対咬合には非常に効果的です。

  • 改善率:機能性反対咬合の70〜80%が改善すると報告されています
  • 使用方法:就寝時に装着するだけ(8〜10時間)
  • 治療期間:6ヶ月〜1年程度で効果が現れます
  • 痛みなし:装着時の違和感は数日で慣れます

骨格性の受け口でも、ムーシールドで口腔機能を改善することで、顎の成長をある程度コントロールできます。早期治療の第一歩として非常に有効です。

Q3

フェイスマスクは目立ちますか?

A. 主に自宅で使用するため、外出時の心配は不要です。

  • 使用時間:1日12〜14時間程度(主に就寝時と自宅にいる時間)
  • 学校では不要:外出時や学校では装着する必要はありません
  • 装着中の活動:テレビを見る、宿題をするなど、普通に過ごせます

フェイスマスクは上顎を前方に引っ張る非常に効果的な装置です。見た目が気になるかもしれませんが、将来の外科手術を避けられる可能性を考えると、とても価値のある治療法です。

Q4

治療後に後戻りすることはありますか?

A. 下顎前突は後戻りのリスクが比較的高い不正咬合です。

  • 成長による後戻り:思春期の成長で下顎がさらに成長し、後戻りすることがあります
  • 習癖による後戻り:舌癖が改善されないと後戻りのリスクが高まります
  • 保定の重要性:治療後は長期間(2〜3年以上)リテーナーを使用します
  • 定期チェック:成長が終わるまで定期的に経過観察が必要です

後戻りを防ぐため、治療後も定期的な通院と保定装置の使用が重要です。特に思春期の成長スパート時期は注意深く経過を見ていく必要があります。

Q5

遺伝でも治療できますか?

A. はい、遺伝性の骨格性受け口でも早期治療により改善できます。

  • 軽度〜中等度:早期から治療すれば、矯正治療のみで改善可能
  • 重度の場合:成長をコントロールし、症状を軽減することは可能
  • 外科矯正のリスク軽減:早期治療により、将来的な手術を避けられる可能性が高まります

ご家族に受け口の方がいる場合は、お子様が3歳になったらすぐに検査を受けることをお勧めします。早期発見・早期治療が何より重要です。

Q6

3歳で治療を始めるのは早すぎませんか?

A. いいえ、受け口の場合は3歳からの治療が最も効果的です。

  • 取り外し式装置:ムーシールドは就寝時のみの使用で、お子様への負担が少ない
  • 短期間で効果:6ヶ月〜1年で改善することが多く、長期間の治療は不要
  • 将来の負担軽減:この時期に治療すれば、将来的に複雑な治療や手術を避けられます

むしろ「様子を見る」ことで手遅れになるケースが多いです。3歳児検診で受け口を指摘されたら、すぐに矯正歯科医に相談することを強くお勧めします。

お子様の受け口が気になりませんか?

下顎前突(受け口)は3〜5歳からの超早期治療が最も効果的です。
3歳児検診で指摘されたら、すぐにご相談ください。

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